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にしかたの昔語り

岩野田植踊
(右写真は平成15年山形新聞より)



                
                               岩野田植踊(昭和23年)
 岩野田植踊の由来
 岩野田植踊は村山市大字岩野に伝わる田植え踊りで、現在は岩野田植踊保存会が伝承しています。詳しい由来は不明ですが、記録によれば明治中期のころには存在していたようで、大正5年大正天皇ご大典記念を期して保存会が組織されました。その後昭和23年新憲法発布時、昭和31年葉山大円院の岩野移転と村山市誕生記念の時、昭和51年と平成元年の冨本大祭(湯野沢熊野神社大祭)の時、平成15年4月岩野熊野神社改築時に踊りが奉納されています。
 葉山山麓のにしかたの村々では小正月の15日朝に雪田の田植え(庭田植(サツキ))の行事がおこなわれていました。山の内地区では今でも1月15日に雪田の田植え行事が行われています。そしてその余興ともいうべき神迎えの踊りの姿がカセドリでした。昔のカセドリは、他村や村内の婦人が庄内おばこのように布で顔を覆い隠し鎌を持ち、腰をかがめ腕や頭を上下に動かし田植えの動作をしながら「明の方(御歳神の座す方角)から田植どりの手伝いに来ました」といって各家庭を訪れ、田植踊を舞っては田楽豆腐や餅をもらい歩く行事でした。より具体的にいえばカセドリは田植の稼ぎ手伝い人のことですが、小正月行事の慣例はうすれ、現在は岩野の田植踊りとして受け継がれ、岩野熊野神社や大円院、また村内に慶事があった時に演じられています。ちなみにこの田植え女は明の方から来る事になっています。この明の方の方角は年によって違うはずですが、老人の話によると「西のはるか山の方からくる。」といっており、どうも西の山とは葉山のことらしく、田植え女は葉山作神の使いと考えられています。昔は尾花沢方面まで田植踊りが行われていたといわれています。この田植芸能も、日の丸扇で太陽神を仰ぎ太陽神を活性化させる動作があり、古くは春の田の神の訪れであり、作神迎えの神事であったと思われます。
 一の滝は早乙女誕生の聖地
 神が降臨する岩野の嶽山、その下を流れる千座川の一の滝には不動尊・荒沢観音が祭られています。また一の滝下流には岩野・湯野沢地区の田に水を引くための一の堰・二の堰・三の堰が流れています。
 不動尊の持つ剣には蛇が巻き付いています。不動尊は大日如来の化身で水神様でもあり、太陽神・火の神でもあります。蛇神は山神であり、また川の蛇行を形容する水神でもあります。古事記には、羽山戸神(里近い山の神)はオケツヒメ神を妻として妹若沙那女(サナメ)他七神を生んだとありますが、ワカサナメ→サナメは「稲の女」で田植えをする早乙女の意味です。田植えとの係わりが深い太陽神・水神を祀る一の滝は聖地であり、巫子が太陽神を迎え神婚して田の神(早乙女)を生む地であったと考えられます。
 岩野巾木田地区の由来
 巾木田とは、脛巾田→蛇木(ハハキ)田のことであります。巾木田の宮田と呼ばれる場所は、春に山の神が田の神に、秋に田の神が山の神かわる聖地といわれています。すなわち、一の滝で誕生した早乙女は、巾木田の宮田(ミヤデン=御福田)に降りてきて田の神となるのです。春に山から降りくる田の神と、秋に山に上っていく山の神は同じ神様=作神様であると考えられています。そして、蛇は稲を食い荒らす野鼠を呑み、また稲作に欠かせない川の蛇行を形容するなど、山の神と田の神の両方の特長を持っています。また蛇は水陸山野を自由に越えてくるし木にも登る健脚の神であり、その蛇の霊力を足に絡ませることによって健脚になるとされ、昔の人は蛇の絡まった形の脛巾をつけて山に入ったりしたり旅をしていました。さらに蛇は夏に脱皮して成長するところから生命の甦りの神ともいわれています。巾木田地区のMさん宅敷地には不動尊の祠があり、周辺には終戦の頃まで樹齢400年ほどの注連縄を廻した二本の門杉があったといいます。巾木田地区を流れる川は、三の堰から東の田野を潤して大久保へと流れていきます。にしかたの各村々の稲や穀物・農産物・動植物の育む太陽神の再生祈願と感謝畏敬の念が、田植え踊りや鹿の子踊り・奴振り・他の民俗芸能として現れたものだと思います。市内西部の葉山山麓稲作文化です。
                     
                              昭和31年、背景は大円院
 所見
 口上を述べた後のゆったりとテデ棒と扇の採り物を替えながら舞う動作に
 入り羽(田植え準備)
 一本ソゾロギ 二本ソゾロギ(二本の扇の踊り)
 ジジ田植え地蔵田植え(腰をかがめながら踊る。)
 太鼓あがりハカの舞い
 腰ふり(二枚の扇で腰の辺で動かす踊り)
などの曲目が見られます。口上は数え唄調で、口上役の田主の名前は見られません。明治ごろから踊り連中が組織され、笠かぶりと係わって出来たと田植踊と思われます。早乙女は女性が演じています。

 写真は平成15年4月の熊野神社竣工祭の時のものです。





 構成
旗持ち 1人 ホラ貝1人(平成元年から)
前口上 1人
鉦打ち 前列3人
テデ衆(手坪) 4人 稲苗にみたてた一尺ほどの棒先に馬の毛を着けたテデ棒を持つ。
花笠 半纏 農作業股引きを着ける。
早乙女 7人 早乙女花笠・振り袖・白足袋・草履姿 日の丸扇とテデ棒を持つ。
早乙女介添え
囃し方
笛 1人
太鼓 1人
唄い手 5人
演目
お正月 朝ハカ あがりハカ
動作
代かき 田植え